昭和初期、閉鎖的で因習に支配された田舎の村。
二百年前の水利権を巡り、庄屋の早川家と武家の柴田家、二つの家で起きた争いで、早川の人間が柴田の人間に殺された。
その事件は表向きはタブーとされていたが、因縁と噂と監視が習慣のようになっている村人
の間で、代々語り継がれていた。
そんな田舎の村役場で出会った早川直樹と柴田綾乃。二人の家は決して交わってはならない血と、村の人間によって決められていた。でも二人は激しい恋に落ちてしまう。誰にも知られてはいけない禁断の関係。人目を避けるために打ち捨てられた神社の中や森の祠で、二人は逢瀬を繰り返す。そして綾乃は直樹の子を妊娠し、二人は学生時代を過ごした街へ逃げようと画策する。自分の不幸は全て娘のせいで娘の幸せを絶対に許せない綾乃の母によって、二人は閉じ込められてしまう。その先に待っていたのは悲しい結末だった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-23 16:46:44
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会話率:31%