失恋の痛みを抱えていた春の日、
雨の中で出会った彼は、優しくて、でもどこか壊れそうな目をしていた。
名前だけを交わして、何度か会ううちに、
わたしは彼の寂しさに、そっと手を伸ばした。
そして──
名前を呼ばれながら、初めて抱かれた夜。
それは、ただのセックスじゃなかった。
わたしは、恋に落ちていた。
けれど、「好き」と言った瞬間、
彼は、わたしを抱かなくなった。
触れたいのに、触れてくれない。
言葉が欲しくて、身体を求める。
身体を重ねても、心が届かない。
これは、恋に臆病なふたりの、すれ違いの物語。
“好き”の意味を、身体で確かめて、心で取り戻すまでの、春の記憶。
切なくて、やさしくて、
名前を呼ばれるたびに涙がこぼれそうになる──
そんな夜を、あなたにも。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-29 15:47:26
7673文字
会話率:16%
アヴァナ伯ウィラード・キャメロンは頭脳容姿財産に恵まれながら、強烈な失恋経験のおかげで厭世家の放蕩者として振舞い、美貌の未亡人オルタンスと後腐れのない大人の関係を愉しんでいた。
ところが30歳のある日、子爵令嬢メイベルを婚約者だと紹介される
。今更年下の少女と結婚できないと即日婚約破棄をしたウィラードは、代わりにメイベルを一流の淑女に仕立て上げ、夫を宛がってやることを決意するが、オルタンスやメイベルに横恋慕する伊達男に邪魔されて……。
拙著「狼と蕾花」と同時代を生きた不器用な男性の物語。「狼と~」の登場人物たちも顔を出します。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-02-18 12:00:00
203295文字
会話率:29%