江戸の街でも屈指の呉服屋で番頭として働く勢太は端正な顔立ちと気風の良さで知られている。毎年縁日が近づくと娘たちから誘いがかかるのだが、呉服屋の主人の一人息子である真砂の子守を任されているため娘たちと出かけることができないでいた。気性の激しい
真砂に振り回されているうちに時が経ち、美しく成長した真砂にいつしか勢太は惹かれていく。真砂も兄のように慕う勢太に恋心を募らせていた。
ある日、真砂の店に水越隼人が着物を仕立てにやって来る。昨年、実の弟であり代替わりして領主ともなった平正について領国に下っていたという隼人は、久しぶりに訪れた呉服屋の仕立ての良さに上機嫌になる。隼人はそこで同席していた真砂の美しさに目を止め、自分の傍へ来るように促し、真砂に自分に似合うと思う織物を選ぶように命じる。
仕立てられた着物を届けに、真砂は勢太と一緒に江戸の山の手にある武家屋敷が立ち並ぶ街を訪れる。自ら出迎えに来た隼人に歓迎される真砂だったが、勢太は追い返され一人で隼人の屋敷に招き入れられる。隼人と二人きりになった部屋で、突然真砂は隼人の腕のなかに閉じ込られ、その唇を奪われる。勢太を慕っている真砂は隼人に許しを乞うが、気に入ったものは自分のものにするという隼人に抱きすくめられ、その身体を犯され、隼人の屋敷に引き取られることになる。
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「誰が恋乞う」https://novel18.syosetu.com/n7705gk/の番外編ですが、このお話だけでも読んでいただけます。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-08-30 19:27:41
90329文字
会話率:57%
一介の鷹匠(たかじょう)から武家である水越平正(みずこしひらまさ)に見染められて小姓になった惺眞(しずま)は、母の法事のために久しぶりに伴の紅市(くいち)を連れて江戸の街に出る。
菩提寺で修行を積む若き僧侶の文覚(もんかく)は惺眞を見てあ
まりの美貌に「弥勒菩薩ではないか。」と驚き、近ごろ塞ぎごみがちだった惺眞の心を軽くさせる。惺眞は自分が仕える平正の寵愛が他人に移ってしまうのではないかと不安がっており、紅市も惺眞の様子に心を痛めていた。
帰り際に不注意から転んでしまった惺眞は文覚に介抱され、やさしく穏やかな反面激しさのある文覚にどこか懐かしい感情を抱く。自分の屋敷に戻ってからも文覚の言葉を忘れられない惺眞のもとに、おりしも平正が訪れてかき抱く。
平正に抱かれながら、惺眞はどこかで文覚の面影を求めていた。
「あえかなる、君へ」https://novel18.syosetu.com/n7724gj/の番外編ですが、こちらの話だけでも読んでいただけます。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-08-14 20:52:48
65980文字
会話率:54%