「魔王…!」
張り上げた声に皆が何事かとこちらを振り返る。
悪夢だと思った。前世の記憶が、魔王との死闘が昨日のことのように鮮明に浮かび、鼓動が早まる。体が恐怖に震える。早くここから離れなければ、そう本能が俺に訴える。ふいに懐かしい声がしてわ
ずかに俺の理性を現実へと引き戻す。
「落ち着け、勇人」
窘めるような落ち着いたその口調は酷く懐かしい心地がした。どうしてその声にここまで安堵するのか自分でもわからない。
「剣也」
顔をあげた先に久しく会っていなかった男の姿を確認してなぜか酷く泣きそうになった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-10-31 23:00:00
6327文字
会話率:42%