セレンディエール王国には建国にまつわる寓話があった。
豊穣を司る女神ユニより宝珠とその宝珠の持つ力を賜った、始まりの王の子どもたちに関してである。
紅色の宝珠は「遠耳」隣国の果ての地で灯される炎の揺らめきまでも聞き取ることができ
る。
黄金の宝珠は「佳き声」 強い感情を込めて発言すれば、聞くもの全てを魅了し、相手の自我を奪ってでも従わすことができる。
蒼の宝珠は「気配を辿る鼻」 匂いを元に姿なき存在を見つけ出すことができる。また姿を偽ったとしてもその匂を変えることは不可能。
翠の宝珠は「命の手」 鼓動が止まらぬ限り己の命の燈を削って癒すことができる。
色なしの宝珠は「透き通る瞳」 眼にしたものの「行い」、そのもの自身の「出自」や「祈り」を見ることができる。
そんな寓話が語り継がれている王国の片隅の領地で育った青年アシュレイ。
亡くなった母は貴族かも知れないと思いながらも、日々の穏やかな暮らしに満足していた。目下の目標は王都にある王宮学院の入学試験合格を果たすこと。
ある日、彼の元に王都よりエディタと名乗る公爵夫人の迎えが来る。母と知り合いらしい彼女と共に王都へ行くことをアシュレイは決意するが、アシュレイは己の「出自」を知らされる。
※予告なく残酷な描写や凌辱描写が入ります。ご注意願います。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-17 20:00:00
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会話率:44%