「俺が産みます」
ベータの発言に騎士団長室がしずまりかえった。無言のアルファの騎士団長に代わり、年かさの騎士が訊ねる。
「しかし、君はベータでは?」
「新薬が開発されてベータでもオメガに転換して妊娠可能になって数年なのはご存じでしょう?」
「し、しかし、君はベータではあるが優秀な魔法騎士で、三男とはいえ侯爵家の……」
「どうせ俺は“なりそこない”ですから問題ありませんよ」
ベータは騎士団長の優秀な片腕ではあるが、ベータであった。名門貴族の子弟は優秀なアルファか子孫を残し政略結婚の手駒としてのオメガがもとめられる。
いくら優秀であっても、平凡なベータは求められないのだ。ベータの“なりそこない”という言葉に貴族階級ばかりの騎士達は沈黙する。
そして騎士団長は平民出身でありながら優秀なアルファであり、その剣と魔法一つだけでここまで成り上がった。
その優秀な血を残せと国王に命じられるほどに、さらには相手がいないというならば、オメガである第三王女を娶れという雰囲気になっていた。オメガらしい美貌を誇る王女だが、その性格は大変悪いと評判の……。
「お前はそれでいいのか?」
沈黙していた騎士団長が聞く。
「はい。できれば妊娠中の産休期間も業務として有給を認めていただけるならば」
「もちろん“重要な任務”だ。許可しよう」
「ありがとうございます」
こうして、二人の契約結婚ならぬ、契約出産はなりたった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-20 21:20:00
24081文字
会話率:43%
■2024年7月1日、一迅社メリッサ様にて書籍化していただきました。
正騎士団に所属する女騎士メルティナは、騎士団長である王弟ヴァルターの直属の部下として働いている。
ある時、それまで一般的なベータであったはずの彼女の性別が、珍しいオメガ
へと変化してしまった。アルファを誘惑し、集団を乱すオメガの身体では騎士として務めることができない。
ヴァルターへの想いを秘めたまま辞表を提出したメルティナだったが、アルファである彼の気配に、急激に発情してしまう。そんなメルティナに、これまで尊敬すべき上官であったヴァルターは、俺の側を離れることは許さないと激しく迫ってきた。
※短編を長編に直した物語です。短編とは人物設定等違っています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-03-15 19:52:54
101367文字
会話率:28%
正騎士団に所属する女騎士メルティナは、騎士団長である王弟ヴァルターに辞表を提出した。
一般的なベータであったはずの彼女の性別が、珍しいオメガへと変化してしまったのだ。アルファを誘惑し、集団を乱すオメガの身体では騎士として務めることができない
。
けれどアルファであるヴァルターの匂いに反応して発情し始めたメルティナに、これまで尊敬すべき上官であったヴァルターは、俺の側を離れることは許さないと激しく迫ってきた。
男女オメガバースものです。独自解釈もあります。巣作りします。
2024.3.2長編の連載も始めました。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-26 17:29:38
24368文字
会話率:18%