サードアイアン社製のバイオロイドは「ヴィノ」と呼ばれ、他社が生産する無機質なアンドロイドと一線を画している。
オーガニックマテリアルと呼ばれるボディーは、軽量炭素フレームの骨格を筋繊維と有水繊維のタンパク質スポンジで包みコラーゲン補強フィ
ルムで覆った材質でできている。センシングデバイスとの通信用に筋繊維内に菌糸を張り巡らせて電気信号を媒介させていた。ヴィノは非常に高額だが、体温、肌の質感や粘膜は人間と遜色がなく、その完成度は高かった。
ヴィノは性産業からその人気に火が付き、今では裕福層向けに一般モデルが市場に投入されていた。一般社会に徐々に浸透し、「ヴィノ」の人権尊重を訴える団体が現れるまでに普及が進み始めていた。
サードアイアン社のコンサルタントが話す「裕福層向けのヴィノ」とはエタニカルのことだった。そして、裕福層の間で密かな流行となっているのは、思春期までの一般人の女性の蓄積データを使って、自分好みの外見をしたヴィノを生成することだという。「リリィ」では実現できなかった一般人女性が売ったライフログとその蓄積データを「エタニカル」は利用することが出来た。
関連作品:
The Emulator - ザ・エミュレータ -
https://ncode.syosetu.com/n9333ja/
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-08-23 00:18:19
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サードアイアン社製のバイオロイドは「ヴィノ」と呼ばれ、
他社が生産する無機質なアンドロイドと一線を画している。
ヴィノは性産業からその人気に火が付き、今では裕福層向けに一般モデルが市場に投入されていた。
一般社会に徐々に浸透し、「ヴィノ」
の人権尊重を訴える団体が現れるまでに普及が進み始める。
しかし、それは表面上の建前でしかなかった。
人間同士では決して見せることのない想像を絶する醜悪な欲望。
人間はその際限のない欲望のはけ口として「ヴィノ」に価値を見いだしてたのだった。
そして、人間は人ではない「ヴィノ」に対してその欲望を少しも隠そうとしなかった。
人間は「ヴィノ」に理性を向ける必要はないと考えた。
理性という生皮を剥いだ醜悪な肉欲。
脈打ち、血の滴る、剝き出しの欲望を「ヴィノ」にぶつける人間。
ありのままの人間の本性を見た「ヴィノ」は何を想う。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-10 18:59:03
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