シリルは名誉も称号も全て剥ぎ取られて領地から追い払われたが、亡き妻の忘れ形見の五つになったばかりの息子、ディオンだけは奪われる事は無かった。
「ちちうえ!首都でちちうえは剣のせんせいになるのですね!」
「そうだ。貧乏暮らしになるやもしれん
がな。」
突然の痛みを肩に受け、シリルはがくりと膝をついた。
「おやあ、かわいそうだ。じゃあねえ、これ以上苦しまねえようにあの世に送ってやるよ。」
シリルとディオンは五人の無法者達、飛び道具も持った夜盗に囲まれた。
剣の腕に覚えがあっても、肩に矢じりを受けて幼子を連れている彼である。
ここまでか!
しかし、シリルが覚悟を決めて息子を抱き寄せた時、彼の首を落そうと剣を振り上げた男こそが死体となって転がっていた。
「どうして?君は誰だ?」
「俺も首都に行きたくてね。隠れ蓑が必要なんだよ。」
サンドベージュ色の美しく長い髪を持ち、紫色の瞳を輝かせて微笑んでいる剣鬼に対し、シリルは感謝どころか妻を失ってから数年ぶりに身の内に燃え立った欲望までも沸き立っていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-20 18:27:00
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