「私、ぜったい外への道を探しだすわ。そしたら、みんなで村からでようね」
「うん、そうなったらあたし、京っていう雅やかな都に行きたいなぁ。おもいっきりおしゃれができそうだもの」
嶺もあおげない崖に擁された村は、はてしれない樹海に封じられてい
た。経立と毒虫があたりにはびこり、病と飢餓が身をむしばむ。それでもみなが望みをすてなかったのは、お師匠様の教えのおかげ。
「天神の力をやどす半神様が童のなかに現れたとき、われわれは救われ、病のはびこる土地からでていけるのだ」
「いつまで経っても半神様は現れなかったわ。このままじゃ鈴ちゃんが死んじゃう!」
草花で身を飾ることが大好きだった美しい姿は、全身に巻いたさらしから血膿をにじませ横たわっていた。
村の薬はつきていた。悲しみに衝かれた常世は、危険な経立がはびこる樹海に、痛み止めになる果汁を採りに行く。さらなる悲劇に遭遇することも知らずに。
蟲毒の儀式が生みだす半神の誕生は目前にせまっていた。
第一部 神魔生誕祭 第一章~第六章折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-22 21:30:00
89798文字
会話率:35%