――ラスプール王国。
世界的に見ても珍しい女尊男非の文化を持つ王国で、初代より以降女王のみが国王として国政を担い、その他上位の役職も女性のみで構成されている国家である。
そんな王国においてグレナ・アルヌートは、『家督は継げないまでも国
家安寧の一助になれたらいい』という入団動機を掲げて王国騎士団へと入団した。
しかして、そこは魔境であった。
女尊男非という文化は当然ながらこの騎士団内部にも浸透しており、男であるグレナはその洗礼を受けることに。
度重なる洗礼に耐えるグレナ。
そんな折に、グレナも所属する部隊が新規発見されたダンジョンへと調査へ赴くことが決定した。
ダンジョンには当たりと外れの二種類があるのだが、しかして今回のダンジョンは外れ。魔物の巣窟と化していた内部において、グレナはここでも洗礼を受けることに。
しかしてその時の洗礼は度を越しており、命の危険を感じたグレナはとうとう逃げ出した。
が、早く逃げなければ殺されるかもしれないという焦燥感と、ここまでに振るわれた暴力による疲労感。その二つが重なっていたこともあって、グレナはその瞬間、次の一歩が空中を踏んでいることに気が付かなかった。
猛スピードで落下したグレナは、四肢の骨が砕けて頭からは血が流れる大怪我を負いながらも、何とか一命を取り留めた。とはいえ、ダンジョン下層にて一人大怪我を負った現状は、死を待つのみと言い換えても差し支えのない状況だ。
死という終わりが間近に迫ったことで、グレナの中でこれまでの悔しさ、そして怒りと憎しみの感情が湧き出た。
「俺にもっと、力があったならッ……」
そんな感情は言葉となって口を突く。本来であれば孤独なこの場。返事など返ってくるはずもなかったのだ。しかして、その声には事があった。
(力が欲しいか? 欲しいのなら、この俺がくれてやる)
その声は、ダンジョンに眠っていたアーティファクトが発した声であった。
自身がここまでの扱いを受けた元凶である王国。その王国に復讐が出来ると聞いて、グレナはこの声を受け入れることに決めた。
これは、そんなグレナによる王国への復讐劇である――
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-10 19:00:00
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