――花は散り際、人は死に様。
昼か夜かもわからぬ奥座敷の金屏風を前に老骨が一人琵琶を抱えて座している。座したまま死したような静寂は動けば首が飛ぶと思わせるほどに鈍色に張り詰めていた。
べぃん。
スサマジイ音が鳴った。明王のごとく立
っていた蝋燭の炎が揺れた。屋敷の数百年動かなかった気配が揺らいだ。
老骨の末枯のような指が突然に弦を上から下へ弾いたのだ。
「東西東西。これよりとある一段二段を語りまするは俄仕立ての琵琶法師、この古狸めにござります……」
にぃ、と御歯黒が覗く。目蓋は頬にくっついていた。
柿色の着物に禿頭――琵琶法師だ。
「私めが語ります前にお集まりいただいた皆々様には肝に銘じていただかねばなりますまい。この世は”地獄”だということを。そしてその”地獄”を生み出すのは、あなた方、”人”だということを……」
彼が語り始める。さてはお前こそ鬼か妖の類と思えば、その口調と声色には人間らしい情愛があった。
ギィイッ、老骨は下から上へなぞり上げて弦を押さえる。始まるらしい。
「さて。此度の一段は、少女が母になるまでの間の出来事にござります。仮に題しまして”褥(しとね)”。どうぞ最後までお座りなすって、ご聴聞かたよろしくお願いいたします……」
べぃん、べん、べん、べん――べべん。
□ 以下注意書きにつき、必読 □
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【お題】
・1000文字未満小説
・執筆時間2時間以内折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-08-04 13:56:25
1000文字
会話率:19%
全ての始まりは、或る、気持ちの良い春の朝に期せずもたらされた報せでした。
――昨晩、私の恋人が死にました。
だけれど夢の中で相目見えた彼は、私にこう言うのでした。
「愛しい人、どうか僕を生き返らせて欲しい」と。
明治~昭和萌えが高じ
て書いたお話ですが、時代考証は結構甘いです。
※相手が死んでるのに性描写有りです。(寝取られては無いです)それを十分に踏まえてお読み下さい。
※本編でタイトル回収出来たのであらすじ変えました。
本編は全15話で完結します。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-11-26 04:00:00
39709文字
会話率:22%