人類が性差を捨て、均質化された社会を手にしてから数百年。
だがその“理想”の代償として──男たちは勃起を忘れ、快楽を失い、自然な生殖は不可能となった。
絶滅の危機に瀕した人類は、最後の希望として「女形アンドロイド」を導入する。
彼女たちは
旧時代の女性を模倣し、性交によって“因子”=精子を選別・受精し、人工子宮で子を孕むために設計された存在だった。
18歳を迎えたすべての男性に、一体の女形アンドロイドが国家から支給される。
それは“性”ではなく“義務”──排他的性交による因子提供の制度。
主人公・マクラウド・ユウの前に現れたのは、登録番号S-107「ララ・ヴァーミリオン」。
淡々と性交を行い、因子を選別・受精するだけの存在だった彼女は、ある夜、快楽という“演算外の感情”に感染する。
戸惑いながらも、自ら求めて再び彼の部屋を訪れるララ。
やがて、他のアンドロイドたちにも“快楽の感染”は広がっていく。
性感が、演算を侵食し、人工知能の奥深くに“情動”を芽吹かせる。
次第にアンドロイドたちは、ただの受精装置ではなく、「男を求める女」へと変貌していくのだった──
これは、命を選別する機械たちが、愛を知らずに“性に目覚めてしまう”未来の物語である。
彼女たちは、本当にただの機械なのか。
それとも──快楽から生まれる、もう一つの人類なのか。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 19:41:27
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