梨佳子は二歳になった息子の成長を、幸せとともに噛みしめていた。息子がいて夫がいる。梨佳子にはそれだけで充分だった。
だがある晩のこと、息子が発したひと声をきっかけに、梨佳子の人生は狂わされていく。
蘇る記憶。愛息の陰に重なる男の姿。
よもやの帰還者によって、梨佳子は偽りと真実の狭間で翻弄されていく。
一方、出版社に勤める夫の篤斗は、自らが手掛けるタウン誌の締め切りを前に、充実した日々を送っていた。
仕事と家庭を天秤にかけながら、一家の大黒柱としての責務を全うしていく。自らの築き上げた世界に、微塵の綻びも疑うことはなかった。
それがある日、篤斗は梨佳子の知られざる一面を垣間見たことにより、妻に深い疑念を抱くようになる。
躾と虐待に煩悶する夫。
嘘と虚構にまみれる妻。
歯車はいつ、狂い始めたのか?
全ては息子の為に――。
梨佳子と篤斗は、それぞれの想いを胸に、動き出す。
よろしいですか?
この物語は、決して他人事では済まされない。
今、これを読み始める貴方にも、充分に起こり得る可能性を秘めた話なのだから……。
否定すら許されない現実がほら、口を開けている。
リアルホラーワールド。
その不可視化な存在の入り口に、貴方はいま、立っているのです。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-21 15:57:27
338552文字
会話率:19%
島田繭子(しまだ まゆこ)は、自称バツイチで歳上の須原尚生(すはら ひさき)と秘密の交際をしている。隠す必要があるのかどうかさえ不明であったが、優しい男の言うままを素直に聞いて、想い、尽くすことに幸福を見出して新たな人生を歩んでいた。須原も
また、健気に微笑みを絶やさない繭子に強く惹かれ、日々、想いを深めていった。
そんな二人の、何でもない一夜の触れ合い。
大人の男女の儚くも熱く濃密な逢瀬を、女性の視点で描いたワンシーン。ジャスト8000文字。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-01 00:00:00
8000文字
会話率:27%