子どもの手が離れた主人公、笑(えむ)は二十年前に恋心を抱いていた圭と再会を果たす。何もかも正反対の二人は自分にないものに惹かれ合い恋に堕ちる。物語は言葉に拘りを持つ笑が書いた小説と言う形で綴られ、そのほとんどが二人の交わす会話で進んで行く。
再会を果たすなり圭は笑に夢中になり、その勢いに呑まれた笑は恋に捕らわれ溺れて行く。圭が発する数々の愛の言葉に満たされた日々を過ごすうちにこの恋は運命なのだと感じる様になる。夢のような蜜月を二人は過ごす。しかし、幸せな日々は長くは続かない。ふとしたことから二人の関係に綻びが生まれ、笑の心に不安と猜疑が入り込む。何とか心の不安を埋めようと必死になる笑。しかし必死になればなるほど全てが空回りして行く。哀しいことにお互いを取り巻く環境が二人の心をことごとく引き離して行く。不安に駆られた笑は目の前にある幸せに気付けなくなり自滅してしまう。お互いがお互いを想い合っているのに空回りする二人。何度も訪れる危機を相手を想う気持ちで何とか乗り越える二人であったが、惹かれ合っていたはずの正反対の考えが結局二人の心を引き離して行く。諦め切れない笑は必死になり恋にしがみつくもその勢いが圭の心を更に引き離して行く。幸せだったはずの恋が笑から元気も笑顔も自信も奪って行く。圭への想いは執着となりやがて憎しみへと変わって行く。必死の想いで放った笑の言葉が最後の引き金となり二人の七ヶ月余りの恋は終わりを告げる。二人の交わす言葉の中に想いの微妙な変化が表されている。笑は小説を書きながら二人の終わりを告げた恋を客観的に見つめることによって圭の気持ちを苦しみながらも理解して行く。そして、圭に対する自分の想いもまた強く実感する。笑の書いた小説はいつ届くか、或いは届かないかも知れない圭へのラブレターである。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-11-14 10:06:38
12020文字
会話率:19%