都会から離れた地方には、現代でもその土地に残る土着の民間伝承などと絡みついた伝統的な儀礼が残っている。
古くから続く物ほど部分的に近代化され簡略化されて、その土地の現代の祭りとして変化していっている。
その一方で古くからの伝統を厳格に受け継
ぐ血統の一族には、表だって知られる事がない因習というモノが色濃く残っていたりする。
この地方都市の外れにある小さな町にも、そう言った過去の因習が根強く残っていた。嘗ては、元服・裳着と呼ばれた、成人の儀式がそれである。
今では二十歳を迎えて公的に成人式として行われる行事ではあるが、昔は十代前半に行われていた。
無論当時は、医療面での問題や平均寿命の違いなどもあったのだろうから、現代と比較するのはおかしいのだろう。
嘗ては子供が早くに亡くなる事も多く、その為、精通や初潮を迎えた子が、大人になった時点でその儀式が行われていた為だとされている。
ただ成人を祝うだけならば普通の風習で片が付くのだが、この町での風習は少し異なる。世間一般では、因習として忌避されるような意味合いを含んでいる。
元服の祝いの宴の中には、成人を迎えた後継者としての男子に対する筆卸を意味する行為が含まれる事がある。成長した男子が次世代を残すことが出来る事を確かめる意味を持ち、男子は早くに性に触れることを推奨する傾向がある一方で、裳着に関しては、逆に女子の処女性が大切にされ婚姻を迎える迄は処女であることが大事にされる。だか結婚に際してその地域の領主が初夜権を持つなどという因習も存在したという。
そんな性に纏わる因習がこの土地には残っている。
この土地に残る因習。それは男子の元服の儀に伴う筆卸の儀式。しかもそれは単に年頃の異性をその相手にするのではない。
儀式の相手役を務めるのは、その男子を産み育てた母親が行うというもの。母親がその役を出来ない場合は、より血筋の近い既婚の女性がその役を担う事になる。
それだけでも、忌避されるには十分な理由となるのだが、この土地ではもっと人としての禁忌に触れる部分が含まれている。
この町での元服の儀式は、一夜限りで終わることがない。無事子孫を残せるかを確認する為、その相手が妊娠出産するまで関係が続くのだ。
血縁による妊娠出産までが1つ目のルーチンとなっている。
そんな因習に基づく儀式の日がまもなく訪れようとしていた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-05-30 00:00:00
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