高校の文芸部に属していた栄一は、今はすっかり文芸に興味を失った公務員だが、今でも文芸同人誌を発行している高校時代の友人山辺に誘われ、彼を支援するつもりで、昔創った短歌を毎月いくつかずつに分けて投稿している。併せて同人誌発行負担料という名目で
山辺の同人誌発行費用のほんの一部を負担しているのは、単なる友情なのか、いまだに文芸への熱意を持ち続ける山辺に対する劣等感なのか判然としない。
同人誌に毎回投稿している栄一の短歌に心酔する女性読者が現れ、ある日栄一の所にやって来る。それを発端に栄一はその女性悦子と付き合うようになる。栄一の短歌は男女の濃厚な恋愛を歌うものばかりだが、それに心酔する悦子は栄一の作中の女に自分を重ね併せているようだということを知り、栄一はいいように悦子をおもちゃにする。
悦子をおもちゃにしていたつもりの栄一はクモの糸に絡まれていくようにいつの間にか悦子と結婚することになってしまう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-02-01 10:52:46
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