西暦1999年のアメリカ、ニューヨーク。時はクリントンの政権下。インターネットの黎明期である。ウインドウズ95のブレイクの後、パソコンにオシャレさと快適さを主張して一世風靡したスケルトン・カラーのiMacに続いて、iBookが発売されて間
もない頃である。電話線にモデムをつないだインターネットの普及も進んで、コンピュータは会社や個人へと一斉に広まっていた。スマホはまだ無く、携帯電話は電話のためだけに使われていた。無線でネットに接続するAirMacも、アップルで始まったばかりだ。
その年の8月、ニューヨークのグリニッジビレッジのホテルの一室で、男の変死体が発見される。セックスの最中だったのか、男はベッドに全裸で仰向けになっていて、気管を潰されて絞殺されている。同様の事件は3件目である。事件がニュージャージー州からニューヨーク州に州を跨いだために、FBIのニューヨーク支局に勤めるマーゴット・リーン捜査官が、一連の事件を担当することになった。彼女には、後に『電子捜査の祖』と称されるアダム・マッケイという捜査のパートナーがいる。
被害者となった男たちは、どれもがウォール街にある一流の投資銀行や証券会社で大儲けしていた優秀なトレーダーたちで、彼らは必ずその日の午後に、自分の口座を解約して大金を現金にして下ろしている。やがて、事件の度に色と形の違うウィッグを着けて印象を変えている娼婦が容疑者として浮かぶ。
一方、ウォール街にあるブロードウェイとの交差点では、無差別狙撃事件が起きた。NYPDの重大犯罪課のマーク・ヨハンセン刑事とジミー・ジャクソン刑事が捜査にあたり、狙撃場所がトリニティ教会の塔の上であることを突き止める。残された薬莢は17個、銃撃での犠牲者も17名、射撃の精度は百発百中である。
CSIの働きによって薬莢にあった部分指紋が照合されて、狙撃犯がユーゴスラビアのコソボ紛争で負傷した、海兵隊員のエリック・キャンベル上等兵であることが内定する。
その年のニューヨークの周辺には、インターネットの普及に伴って、所々で過電流が生じて、不可解な電磁波が飛び交っていた。街には、それを感じ取る者たちがいる。
尚、この作品は、電脳麻薬がどのように作られたかを記す、2028年のパリを舞台にした「PARIS THE STARDUST (星屑のパリ)」の前日譚である。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-11-12 07:00:00
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