遠野奏《とおの かなで》は三歳から十五年間、母の期待に応えるためにとピアノを弾き続けて生きた。けれどとある出来事をきっかけに、精神的ショックから鍵盤を叩くことができなくなってしまう。アイデンティティを失った自分に価値が見出せずにからっぽの日
々を送っていたが、ある日生まれ育った横浜を離れ、遠い田舎町にある伯父の家で暮らすことを決める。目的は、すべてを忘れるため。
どうせからっぽなら、悲しみだっていらない。
転入した県立立山《たてやま》高校で奏が出会ったのは、祖父と二人で暮らす花田大和《はなだ やまと》だった。明るく人気者の花田とは反りが合わないだろうと敬遠したが、花田はどういうわけか奏を構い続ける。
花田には夢がある。祖父の花火工房を継ぎ、日本一の花火職人になること。夢に生きる花田の姿は、奏には眩しすぎるものだった。
自分にないものばかりを持つまっすぐな花田に、奏は次第に惹かれていく。
大型犬系純粋男子高校生×猫系クール男子高校生
ハピエン
fujossyでも連載しています折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-04-25 07:52:47
9956文字
会話率:51%