何気ない日常会話を、何気なく交わす夕食が、ひどく新鮮なものに思える。
昔は、彼とこうして楽しく食事を取るのが当たり前だった。
友達だった時もあるし、セックスするだけの相手だと思っていた時もある。
その後は、葵の記憶が曖昧で、よく判ら
ないことばかりだが、食事の世話は恐らく、彼がやっていてくれたのだろう。
仕事もあるのに、わざわざ自分を気に掛けてくれて、食事の世話から日常生活に至るまで、総ては彼がやってくれていたことだ。
そう思うと、感謝の念は更に募った。
できのいい実弟に劣等感を抱きながら成長した透と、幼い頃家庭環境に恵まれなかった葵は、高校生の時に出会って以来、互いにシンパシーを感じ、友人としての関係を確固たるものとしていた。
しかし、高校二年の冬に起こったとある事件が引き金となって、二人は徐々に対等な関係を逸し、やがて葵は透の願う通りの生活を送るようになったのだが……。
高校生~社会人の時代を行き来しながら進む「等閑式」シリーズ16話目。
「等閑式」シリーズ第2部、社会人編第4話。
殺伐とした描写の多いシリーズの中で、甘い方向に比重を置いた受けから攻めへの優しい話。
この話は「爛壊書簡」(http://rankai.sakura.ne.jp/top.html)に掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-08-21 02:45:26
8690文字
会話率:52%