順風満帆な人生を送ってきた川端聡は、就職活動が上手くいかず、激務で有名な不動産会社ユアハウスに入社する。仕事に慣れてきた頃に、同期の野村の自殺現場を目撃してしまい、精神的なバランスを崩して、休職することになる。
川端の休職と同時期に、両親
は沖縄移住を決行する。川端は数ヶ月間東京で大学時代の友人山下とルームシェアするが、復職も転職もままならない精神状態が続き、両親を追って沖縄に移る。沖縄の両親との生活もまた閉塞感があり、川端は那覇のホテルに一ヶ月滞在することにする。そのホテルで、マッチングアプリを使ってユイ(小川有為子)と出会う。ユイはホテルで自殺未遂を起こすなど、川端以上に不安定な精神の持ち主だった。
ユイの勧めで、彼女の父親のSHiN(小川俊哉)が創設したWOFFというカルト団体に入り、川端はセミナーを通じて新しい自分に目覚めていく。勧誘活動で成果をあげた川端はリーダーポディションに大抜擢されて、シェアハウスからWOFF BASE(WOFFの本拠地)に住処を移す。
WOFF BASEで、川端は脱退するメンバーに対して電気を用いた拷問が行われていることを知る。悩んだ末に、雑誌記者の大谷にその事実を告発する。雑誌への記事掲載と同時に、沖縄県警による家宅捜索が行われる。しかしWOFFは完全に証拠を隠滅していた。真っ先に疑われるのは新参者の川端だったので、彼はその日の夜にWOFF BASEから脱出を試みる。駐車場でユイが待っていて、彼女の車で沖縄の北部へと逃亡する。空港もフェリーもWOFFの監視下にあった。厳しい状況の中で、川端は沖縄から東京に戻るために、政治団体RIMの我那覇に連絡をとる。RIMは沖縄独立を訴え、テロによって独立を実現しようとしており、その計画を以前川端は我那覇から聞いていたのだった。彼らの計画はRIMの武力で吉の浦火力発電所を制圧し、沖縄本島の送電網を人質にとって、日本政府と交渉して独立を承認させるという無謀なものだった。川端は我那覇から拳銃をもらい、RIMのクーデター決行日の沖縄大停電の混乱に乗じて、WOFF BASEに突入する。そしてSHiNを人質としながら、那覇空港へ向かう。路上で一晩を明かした後で、川端とユイは始発便に乗って、東京へと脱出する。
(※この作品はカクヨムにも掲載しています)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-10-10 14:43:51
151487文字
会話率:65%
【梗概】
下請け映像プロダクション勤務の宮原紡(みやはら・つむぐ)はインドとタイの若年娼婦及び男娼を取材中、奇妙な妙な噂を耳にする。どんな受給者(レシピエント)とでも拒絶反応を起こさない万能臓器の闇市場があるというのだ。もちろん臓器の移植
には生体拒絶反応が伴うので俄かにそれは信じられない。宮原と付かず離れずの恋人坂下理紗子(さかした・りさこ)は「その用途だったら生体クローンよりもiPS細胞の方が望ましいでしょ」と宮原との会話の末に結論付ける。
謎の万能臓器について意外なところから情報がもたらされる。N新聞社勤務の情報通三枝木晴正が「世界でも有数のハイテク企業CEOが膵臓癌から立ち直ったのは万能臓器のお陰だ」と告げたのだ。また同様の移植を受けたと思われる金持ちたちが移植後必須となるはずの免疫抑制剤を服用している様子がないとも言う。
その三枝木が突如姿を晦ませる。宮原がフィリピンへ臓器売買の取材に行く前日のことだ。伝手を頼って取材中に宮原はマニラ速報社の記者アブドゥにアポイントメントを取り付ける。アブドゥは失踪した三枝木が取材メモ中に残した人物の一人だ。そのアブドゥが万能細胞は奇跡だと宮原に告げる。更にその奇跡は宗教上の奇跡ではなく奇跡を起こした本人そのものに由来するとも言う。万能細胞の符丁は『ダビデのパン』で、それは現在まで生きながらえたイエス・キリストそのものだ、というのだ。そして、その売買を取り仕切っているのが……。
※ Facebookサイト『小説家気分でみんなに読んでもらおう。』 (https://www.facebook.com/groups/novel.raed/?fref=ts)で先行掲載。
復活した第一回ハヤカワSFコンテストで「奇妙な延命」として一次通過したSF。翌年、編集の指摘を入れリライトするが一次落ちする。当時はSTAP細胞疑惑がまだ疑惑でしかなく、仮に世に出れば話題性があったと思う(2013年03月が第一回の締め切り、2014年01月がSTAP細胞の論文2本(ネイチャー/01月30日付)、03月末が第二回の締切)。だが現時点では使い道がなく、眠らすにも飽いたので、この場もお借りすることにした。咀嚼いただければ有難い。百枚強の短編。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-09-13 06:17:03
35678文字
会話率:60%