二〇二一年三月。
新型ウイルスが跋扈する世界の片隅、殿坂空惟はテレワーク自粛生活を満喫している不謹慎な男だった。元々引き篭もりが苦にならないコミュ障、これはいいぞ、いっそずっとこのままでいいぞなどと嘯きながらも、腹の底には無意識の寂しさ
を抱えて過ごす日々の無聊を、サボテン相手の独り言とまだ行ったことのない洋食屋のデリバリーで慰めている。色も恋も無縁で、それで何が足りぬものかと思っていたのに、
「こんにちは、『山容亭』です!」
飛び込んできた少年の声にたちまち掻き乱される、暮らしのリズムも、孤高も、ひねた心までも。
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あんなこともあったよねぇって思い出して、笑い話に出来る日がいつか来ますようにと心から願って二〇二一年三月に書いたBL小説です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-01-11 05:00:00
137604文字
会話率:39%