失恋の痛みを癒すため、黒川ちえは終電間際のバーで一人、グラスを傾けていた。社内恋愛の末、後輩に彼氏を寝取られるという屈辱を味わい、酔った勢いで入った見知らぬ店。そこで彼女は、品の良いスーツ姿の男・片山智也と出会う。
「隣、失礼しても?」
少し意地悪で、けれど包み込むような彼の言葉と視線に、ちえの警戒心はゆっくりと解かれていく。終電を逃した二人は、自然な流れで「始発まで一緒に」と時間を共にすることに。歩くうちに、片山の指先と視線が徐々にちえの心と身体を揺さぶり始める。
「黒川さん、今すぐ欲しいんです」
ホテルにたどり着いた頃には、ちえの理性は快楽と酔いに溶けかけていた。優しくも巧みな指と舌、焦らされる快感、そして意地悪なささやきに翻弄されながら、彼女は何度も果てていく。羞恥と悦びの狭間で、自分がどれほど求められているかに気づいたとき、身体も心も片山に支配されていた。
「俺と定期的に会いましょう。連絡先を交換して――それが条件です」
まるで最初から仕組まれていたような展開に戸惑いながらも、ちえはその条件を呑む。
「……でも、なんで私なんです?」
「さあ……俺にも分かりません。でも、前からあなたのことを知っていましたよ」
傷を抱えた女と、秘密を抱えた男。快楽に沈みながらも、二人の関係は「一夜限り」では終わらなかった――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-08 02:53:03
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