2024年、東京。人々は心をすり減らしながら、心に出来た空洞をなんとか埋めようとしている。そんな理由からか、今ではほとんどの日本人が、眠っても夢を見なくなった。それでもTKOは、ナギサという馴染みの女とベッドを共にした夜に、なぜかその部屋
に、13体の乳児の遺体が遺棄されている奇怪な夢を見る。TKOはそれを何かの暗示とも捉えている。
少子化が解消されず、移民の流入を余儀なくされた都市の犯罪は、凶悪化して、複雑化する一方である。そんな中、フランスの外人部隊と傭兵で、実戦のキャリアを積んで来たTKOは、ロサンゼルス市警察のSWAT隊員であった中国系アメリカ人のリアナ・ショウと、コンピュータ・オペレーターである在日中国人3世の孫大誠をチームメイトに、[賞金稼ぎ]の俗称で呼ばれる私立探偵を生業に、外国人犯罪や、難解な事件の解決にあたっている。
スマホとコンピュータの発達によって、人々の生活は格段に便利になった。ところがそれに伴って、個人の秘密の領域が拡大し、人間関係は奇妙に軽薄で歪になった。社会は空虚で、ひどく窮屈だ。人々は日常のストレスから、妄想や仮想現実に逃避して、東京の街には規制のない、マンガやアニメ、ゲームや、AVなどの[ブロークン・カルチャー]が溢れている。そんな東京の街は、侮蔑と愛着を込めて、人々から[シティ]と呼ばれている。
そんなある日、NSA(アメリカ国家安全保障局)のスチュアート・エジソンが、TKOのオフィスを訪れて、日本人が夢を見なくなった現象を[病症]と言って、原因を突き止めて欲しいとの仕事を依頼する。
エジソンが言うには、それはもう日本だけの問題で無く、彼らの調査では、東京を発祥に、同じ症状が中国の北京や上海に広がって、韓国のソウルでも蔓延しているとの話だ。そして、ロシアのモスクワでも報告が上がり、アメリカでもそんな症状を抱えた人々が現れ始めている。現在は、ウォール街の証券ブローカーに限られているが、原因はまったく突き止められていない。
夢は創造力の源泉であり、アメリカからアメリカン・ドリームが失われるようなことになれば、世界の優秀な人材がアメリカを目指して集まって来る慣わしが無くなって、それは国家の将来の大きな損失となる。そこでアメリカ政府は、国家の安全のために、そんな症状の感染を水際で防がなければならないと考えたのだ。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-05-23 09:34:33
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