家族の愛を知らずに育った天野架純は、自分に価値があると証明したくてずっと努力を積み重ねてきた。いい大学に通い、やっと手に入れた内定。
そしてずっと続けてきた大手学生塾でのバイトでも、コツコツと頑張り今では「人気講師」と言われるまでになって
いた。
そんな私にとって、和田先輩は特別な存在だった。
初めて指導についてくれた社員講師で、誰よりも真剣に生徒と向き合い、授業もわかりやすい。先輩の背中は私の目標であり、憧れだった。
だからこそ、あの言葉は許せなかった。
「……俺は結局、誰にとっても、特別な存在にはなれないんだ」
そう言った先輩の言葉が、胸を深く抉った。
ならば私が先輩を“特別”にしよう。
だってきっと最初から、先輩は私にとって特別だったから。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-01 20:20:00
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