西暦2046年、6月半ば。グリーンランドのセルメシアック(サドルマウンテン)の麓で、地中に溜まったメタンガスが爆発して永久凍土に巨大な縦穴が空いた。直径100メートル、深さ200メートルの巨大な穴だ。デンマーク軍の警備の元、自治政府によっ
て、ジェシー・クリアウォーターとブライアン・ヴァルマらの地質学者のチームと、ココ・ハナセという日本人の微生物学者とアシスタントのエマ・ハーランド、ベテラン考古学者のナディーン・ブラックマンと、細菌学者のレティシア・ヴァレリーがその地へと集められる。
調査は進められ、原生代の地層に、ハスの花の形をした何かの化石が発見される。ココが岩肌にその化石を直視すると、化石に黄色い微生物が湧き出して、ココは一瞬、意識が朦朧として、何かを盗まれたような感覚におちいる。
ココはその日から、なぜか時折、全裸にスリップ1枚の姿になって地球の原生代の海に漂い、海底へと沈んでゆく奇妙な幻覚に取り憑かれるようになる。
解析すると微生物は、原生代に生まれた現代の『粘菌』の原型であることが分かる。『粘菌』は、ココが専門とする分野だ。『粘菌』とは、植物と動物の要素を併せ持ち、脳が無いのに集団で連携して活動する能力を持ったアメーバ状の単細胞生物である。
ある時、原生代の『粘菌』に触れていた、指導力のあるジェシー・クリアウォーターが突然、行方知れずになった。ホテルの彼のベッドには、所々が赤みがかった乳白色のジェルが残されていた。
1日半が経って、ジェシーがなぜか女性となって研究室へと戻ってくるのだが、誰一人として彼(彼女)の異変に気付く者がいない。何の疑念もなく、いとも自然に女性になった彼を受け入れるのだ。挙げ句は、ずっと近くにいた仲間たちでさえ、彼女が男性だった記憶を失ってしまう。
ジェシーが行方不明になったその夜の事だ。ジェシーはホテルで眠っていて、深夜にふと目を覚ました。するとその部屋には、日本人と思わしき全裸の女が立っていた。ココかと思ったが、その女はココでは無い。別の日本人の女である。その夜、ジェシーはその女とめくるめくセックスを楽しんだ。
調査を終えて、ジェシーがアメリカへと帰ってきた。ジェシーが空港の入国審査を通り抜けた際に、AIの『ZETTA』が監視カメラを通して、そこを通ったジェシーがパスポートの写真とは別人で、女性であることに気付く。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-07-29 08:00:00
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