「何でそこまで詳しく判るの?」
「お前の半ズボンから出ている向こう脛に、手首についた赤い帯状の拘束痕と同じものが残ってんだよ」
目の前の黒縁眼鏡は慌てて自分の脚を検めた。
真夏の自宅だからといってどうでもいい恰好ばかりしているか
ら次々物象が出現する。
隠そうと思えば簡単に隠せるだろうに、三島にはそもそも自身の外見に対する注意力が不足している。
「神原くん、やっぱり刑事になった方がいいよ」
「だからならないんだよ」
三島はずるずると神原の傍に這いながら、息せききって捲し立てた。
「たったこれだけの赤い痕からあらゆる真実を導き出すなんて、推測力が半端じゃないよ。映画に出てくる探偵みたい。いや、もうこれは推測力じゃないね。推測力に裏打ちされた想像力だ」
「突然早口になるなよ。お前のテンションのスイッチが俺には判んねェよ」
派手でアウトドアな攻め、神原が、地味でインドアな恋人、三島に振り回されるコメディ。
俺様攻めに見せかけた不憫攻めと、ドM受けに見せかけたドS受けによる軽いタッチの。爛れながらも平凡な大学生の日常を描く「アクアリウムシリーズ」4話目。
インドアで根暗なメガネ青年、三島と、三島の友人で恋人のはずのモテモテ青年、神原の、愛と憎しみと桜吹雪の物語。
神原、インドア派三島の愉悦いっぱいな被虐趣味ライフを知る。
この話は「爛壊書簡」(http://rankai.sakura.ne.jp/top.html)に掲載しています。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-12-07 03:34:33
1884文字
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